しっかり忘れました。

【有償減資】

 

Q 当社は資本金5千万円(額面50円)の株式会社ですが、この度事業の縮小のため、

資本金を1千万円を株式消却により有償減資することにしています。この場合の商法、税務上の注意点を挙げて下さい。

 

                         租税法 税理士 中江博行

 

T.減資の方法

  設問のように、会社の資本金を5千万円から1千万円減らして、4千万円に資本金を減少させることを減資という。

 減資には、会社財産を株主に返還する有償減資(実質的減資)と会社財産の払い戻しはせずに、帳簿上で資本金額を減少させる無償減資(形式的減資)があり、設問では有償減資をとっている。

 もちろん資本金額は、会社の財産を確保をするための基準となるもので、会社の信用を表象するものであることから、みだりに減資をすることはできず、商法で厳格な規定が定められている。これについては“商法”で、詳述してもらう。

 減資の方法には、@額面金額を減少する方法、A株式の併合による方法、B株式を消却する方法が通常考えられ

 @の額面金額を減少させる方法とは、典型的な減資方法で、減少額にあたるものを株主に払戻す場合と株主の損失で株金額を切捨てる場合とがあり、いずれの場合も減資決議とともに定款変更の決議を要する(商法166)。

 AとBは、発行済株式総数を減少させる方法で、Aの数個の株式を併合して株数を減少させる方法とBの特定の株式を消却させる方法とがある。併合は、例えば二株の株式を一株にする様な株式数の減少であるが、全株式に一律に行われる点で公平であり、名義上の減資に適しているが、端数株式を生ずることがある。消却には、株主の意思に関係なく無差別の抽選などによって行う強制消却と、株主との同意を得て特定の株式を譲り受け、消却する任意消却の方法がある。任意消却による方法が、通常の減資方法として利用されている。

 減資方法との関係を次表に示す。

   減資の方法  発行株式数 有償・無償の区分
額面金額の減少
 
払い戻し  減少しない   有償
切り捨て    〃   無償
株式の併合  減少する   無償
株式の消却
 
強制消却    〃   有償・無償
任意消却    〃   有償・無償

 

 この他に減資方法としては、これらを併用する方法や額面金額も発行済株式数も減少しないで資本金額の減少による方法も考えられる。

 上記表のように有償減資としては、払い戻しにより額面金額を減少させる方法と有償で行う株式の消却がある。

 

V 減資の税務

 減資に伴う税務上のポイントは、減資差損・減資差益の税務上の取扱い、株式の取得価額の付替えやみなし配当等の問題である。

 有償減資の場合には、株式について払戻額が資本の減少額を超過するときは減資差損が発生し、それとは逆に払戻額が資本の減少額に達しないときには減資差益が生ずる。

 

1.減資差益が生ずる場合

  本設問で、払戻金額を800万円とした場合を考える。

(1)この場合の仕訳は(取得時の仕訳は省略、以下同じ)、

   (借)資本金 1,000万円 (貸) 現金預金         800万円

                   資本積立金(減資差益) 200万円となる。

 額面金額より払戻金額が少ない場合に生ずる減資差益は、企業会計上は「資本準備金」であるが、法人税法上は資本積立金とされ(法2十七ハ)、資本等取引に該当し課税所得から除外され(法22D)、損益に影響することはない。

 また、この場合には

(2)減資会社の株主については、みなし配当は発生しないが、株主の所有減資会社の取得価額を次のように付け替える。

 法人がその所有する株式(旧株)について、資本の減少に伴う払戻しとして金銭その他の資産を取得した場合は、その資本減少の日の属する事業年度以後の各事業年度の旧株1株当たりの取得価額は、旧株1株の従前の帳簿価額に、その資本減少の直前においてその法人の有する旧株の数を乗じて計算した金額から、その取得した金銭の額及び金銭以外の資産のその取得の時における価額(時価)の合計額を控除した金額をその資本の減少の直後においてその法人の有する旧株の数で除して計算した金額となる(旧法令45、法令119条の3E、法政令119条の9)。

 (注)平成12年度の改正において有価証券関係の税制上の整備が行われた。改正法では、法人税法30条及び関係政令が廃止され、法61条の2が新設された。同法3項では、法人株主が、減資による払い戻しにより金銭等を取得した場合に、保有株式の譲渡損益の計算における譲渡原価の額は、保有株式の帳簿価額のうちその金銭等の合計額に達するまでの金額とされた。実務上は従来の処理に変更はない。

 なお、個人株主の場合の付け替え計算も法人株主と同様である。

2.減資差損が生ずる場合

  本設問で、払戻金額を1,500万円とし、減資前の貸借対照表を次のように想定する。

      貸借対照表    (万円)

  諸資産  8,000  資本金   5,000

           資本積立金 1,000

           利益積立金 2,000

(1) 減資差益とは逆に、払戻額が株金額を超えた場合には、減資差損を生ずる。

 本設問の場合の通常の仕訳は、

    (借)資本金   1,000万円  (貸)現金預金  1,500万円

       資本積立金  500万円   

        (減資差損)

 となり、課税上の取扱いは減資差益と同様に資本等取引であるとして損金不算入とされる。

(2)本設問の場合に、資本積立金額から構成されるのか、それとも資本積立金と利益積立金の双方により平均的に構成されるのか疑問がないわけではない。

 法人税基本通達3−1−8においては、「…その超える部分の金額が資本積立金又は利益積立金のいずれから成るかは、当該交付する法人の計算による。」としている。したがって、本設問の場合、減資会社がその超過額の金額が利益積立金によるものとして計算すれば全部がみなし配当となり、その全額が資本積立金から成るものとする計算をした場合には譲渡益となる。

(3)法人が資本の減少または株式の消却により交付を受けた金銭その他の資産の合計額が、その交付の基因となったその法人の株式の帳簿価額を超えるときは、その超える部分の金額のうち、その法人の資本等の金額からなる部分の金額(資本金額および資本積立金額の合計額)以外の金額からなる部分の金額は、受取配当金とみなすこととされている(法24)。

  これら受取配当金とみなされた金額は、一定の条件を満たせば、みなし配当の益金不算入(法23)及び所得税額控除(法68)の規定の適用がある。

(4)法人がその所有する株式(旧株)について、資本の減少に伴う払戻しとして金銭その他の資産を取得した場合は、その資本減少の日の属する事業年度以後の各事業年度の旧株1株当たりの取得価額は、旧株1株の従前の帳簿価額に、その資本減少の直前においてその法人の有する旧株の数を乗じて計算した金額から、その取得した金銭の額及び金銭以外の資産のその取得の時における価額(時価)の合計額を控除した金額をその資本の減少の直後においてその法人の有する旧株の数で除して計算した金額とされている(法令45)。

 この場合、金銭および資産の合計額のうちに減資の場合のみなし配当に該当する金額が含まれているときには、そのみなし配当とされる金額を控除して合計額を計算する。

 

(5)個人株主の場合も、みなし配当として課税を受けるが、法人株主の場合と異なり、その株式の帳簿価額にかかわらず利益積立金からなる部分をみなし配当とされる(所法25)。また、個人株主の場合は、配当控除(所法92))および源泉徴収された所得税額について税額控除(所法120)の適用がある。

 法人株主の場合と同様に取得価額の付け替え計算を行う(所令115A)。

ポイント

 *資本等取引は、課税所得の計算から除かれる。

 *減資の場合に発生する減資差益・減資差損は、いずれも資本等取引に該当する。

 *株式を消却する場合には、みなし配当に注意する。  

                           以上